令和4年4月8日 全日制課程入学式 式辞

 満開だった桜の木々に、光に照らされた緑の若葉の色が少しずつ入り交じりはじめた光景を、春の香りが彩る今日の佳き日、御来賓並びに保護者の御臨席を賜り、令和4年度、愛媛県立川之江高等学校全日制課程の入学式が挙行できますことは、生徒並びに教職員一同の大きな喜びであり、深く感謝申し上げます。

   ただ今、入学を許可いたしました、176名の新入生の皆さん、入学おめでとうございます。本校への入学を目指してこれまで重ねてきた努力に対して敬意を表するとともに、創立110年を超える歴史と伝統を持つ本校の一員となった皆さんの入学を心より祝福するものであります。

 一昨年の春以降、日本はもちろん、全世界にとって新型コロナウイルスのまん延が脅威となり、学校現場にも大きな影響がありました。皆さんは中学1年生の後半から、臨時休業や学校行事の中止・縮小、さらに部活動においても活動の制限や各種大会・コンクールの中止等、やりきれなさや喪失感を埋めるのは簡単ではなかったと思います。悔しさを胸の内にしまい、前を向くという強さを発揮するとともに、当たり前が当たり前ではなく、ありがたいことだったということに気づき、感謝することの大切さを学んだことと思います。

 本校は今年度、「社会に貢献できる人材の育成」を重点努力目標に掲げ、生徒一人一人が主役として輝く学校、地域に信頼される学校を目指して、自ら考え、発信し、行動できる生徒の育成に努めたいと考えています。

 さて、入学式に臨んでいる皆さんは今何を考えていますか?きっと、これからの高校生活について様々な思いが交錯していることと察します。

 入学に当たり、私からは「好奇心」についての話をしたいと思います。昨年、日本人として28人目のノーベル賞(物理学賞)を受賞した現在の四国中央市の大先輩で旧新宮村出身の真鍋淑郎さんは、記者会見で「自分に興味があって得意なことをやれば、一生幸せに暮らすことができる。」と「好奇心」を持って取り組むことの大切さについて話されていました。私自身の今までの教員生活においても、「好奇心」旺盛な子どもたちが勉強や運動・文化活動等において驚異的に成長した姿を見てきました。そうした子どもたちに共通していたのが、「なぜ?、どうして?」という思いを口にしていたことです。「好奇心」を持って「知ろうとする気持ち」が子どもたちを成長させる原動力になっていたことは間違いないと思っています。もちろん「好奇心」を持っていろいろなことにチャレンジしても、必ずしも「成功」や「成就」、「達成」につながるとは限りません。「失敗」という結果に至る場合も少なくないでしょう。しかし、「好奇心」や「夢・希望」を持って新しいことや困難なことに果敢にチャレンジした結果、失敗に至ったとしても、その過程には大きな意味があると考えます。そこからは、同じ失敗を繰り返さないという強い決意、成功に導くための思考力や工夫、実践力が生まれてくるからです。つまり、より高い人間的な成長を目指す生き方が確立されてくるのです。

 皆さん、本校における学びの中で、「好奇心」や「夢・希望」を持って様々なことにチャレンジする気持ちの灯を、本日の今から心に灯してください。そして、失敗を肯定的にとらえ、これを恐れず、何度も何度もチャレンジを繰り返すことで、たくましさを身に付けていってください。そうした前向きな日々の繰り返しは、皆さん一人一人の人間力を磨き、人生の大きな宝物となると確信しています。

 江戸期にこの川之江の地に生をうけた尾藤二洲の教えに「行は衆善を取れ」という一説があります。「人のいいところを見習いなさい。」という意味でしょう。この川之江高校に集った仲間たちのいい部分をお互いが取り入れて、切磋琢磨しながら人間的に大きく成長していくことを期待しています。

 最後になりましたが、保護者の皆様、本日は、お子様の御入学、誠におめでとうございます。これからの三年間は人生の中でも一番多感な時期であり、夢や希望を抱き、自分自身を見つめ、これから進むべき道を模索する大切な時期です。お子様が充実した日々を送り、心身ともに大きく成長してほしいという点において保護者の皆様と学校は目指す方向が合致しています。保護者の皆様と学校が、子どもたちの成長を心から願う協働のパートナーとして力を合わせて進んでまいりましょう。文武両道の教育方針に沿った本校の教育活動に御理解をいただき、御支援と御協力を賜りますようお願い申し上げ、式辞といたします。

令和4年4月8日   愛媛県立川之江高等学校長 松木 義明