校長室より
令和4年4月1日付で川之江高等学校の校長に着任いたしました 松木 義明 と申します。本年度、4年目を迎えました。本校同窓生の皆様、地域の皆様、改めてよろしくお願いいたします。 令和7年4月1日 校長 松木 義明 |
令和7年4月8日 全日制課程入学式 式辞
満開だった桜の木々に、光に照らされた緑の若葉の色が少しずつ入り交じりはじめた光景を春の香りが彩る今日の佳き日、PTA会長 篠原 裕和様、同窓会長 井原 和彦様、愛媛県議会議員 石川 剛様をはじめ、御来賓並びに保護者の御臨席を賜り、令和七年度愛媛県立川之江高等学校全日制課程の入学式が挙行できますことは、在校生並びに教職員一同の大きな喜びであり、深く感謝申し上げます。
ただ今、入学を許可いたしました、百四十五名の新入生の皆さん、入学おめでとうございます。本校への入学を目指してこれまで重ねてきた努力に対して敬意を表するとともに、創立百十七年を迎える歴史と伝統を誇る本校の一員となった皆さんの入学を心より祝福するものであります。
ここ数年のコロナ禍での経験を振り返ってみますと、皆さんの心の中には、それ以前の家庭生活や学校生活が当たり前ではなく、ありがたいことだったということに気付くとともに日々の何気ない生活に感謝する気持ちがより強まったのではないでしょうか。この気付きは皆さんの今後の人生にとってもプラスになったに違いないと私は考えています。
さて、本校は「社会に貢献できる人材の育成」を重点努力目標に掲げ、生徒一人一人が主役として輝く学校、地域に信頼される学校を目指して、「自らの夢の実現にチャレンジし、懸命に頑張れる生徒、自ら考え、発信し、行動できる生徒、他者と協働でき、思いやりや素直な心を持った生徒、自らを律することができる生徒」の育成に努めるべく取り組んでおります。入学式に臨んでいる皆さんは今どのようなことを考えていますか。緊張とともにこれからの高校生活に対する様々な思いや希望、そして不安が交錯していることと察します。
入学にあたり、日本初の実測地図である『大日本沿海輿地全図』を完成させた伊能忠敬の生き方を紹介することで、皆さんへのお祝いの言葉といたします。
伊能忠敬は、江戸時代の後半に上総国(現在の千葉県)で生まれ、のちに村の名主として村政はもちろん、酒造業を中心に運送業・米穀の売買、金融業などの商いを幅広く営んでいた人物です。四十九歳の時に家業を引退し、第二の人生に向けて始動を開始するために江戸に移り住むとともに十九歳年下だった幕府天文方の高橋至時の弟子となり、天文暦学を学びました。そして当時の日本では未知だった地球の大きさを知りたいという大望を抱き、緯度一度の距離を求めようと、幕府の許可を得て自ら測量隊を指揮し、現在の北海道を皮切りに結果的には全国各地を測量、忠敬自身も約三五〇〇〇キロを自ら踏破するなど、『大日本沿海輿地全図』を完成させたのです。この図は現在の地図と比較しても、その精密さ、精度の高さがうかがえます。ちなみに忠敬は川之江周辺の測量のために六十三歳の時、この川之江の地にも滞在しています。
伊能忠敬がこれほどの大事を成し遂げた理由として、「夢の持続」ということがまず第一にあげられるのではないでしょうか。忠敬は五十代になって、家業を引退したのち、急に天文暦学を学ぼうと考えたわけではないはずです。上総国(現在の千葉県)の海辺で育った彼は、幼少期に満天の星空を眺めながら、天体に対する興味を抱いていたのです。そして若い頃から家業の傍ら継続して勉強を続けていたのです。さらに当時、名主として、村の政治を通して大勢の人間を動かしていたことが、のちに測量隊を指揮するのに役立ったはずです。要するに、忠敬の前半生と後半生は別のものではなく、一つに繋がっているということです。そして経験したことの全てを取り込んで、何一つ無駄にしない生き方をした人だと思います。私は忠敬が決して突出した才能を持った人物だとは思いません。しかし彼には抜群の根気がありました。一歩一歩の歩みは微々たるものでも、それを十七年間繋いでいって日本列島を一周するに至ったのだと思うと、彼の「好きなことに興味・関心を持ち続け、それに向かって根気強く努力を続けるとともに経験したことを自分の今後の人生、行動に活かす」生き方に対して、感動を覚えます。
皆さんに伝えたいのは、自分の夢や目標を常に心に留め、ひたむきに取り組む「情熱」と困難や挫折を味わってもあきらめずに努力を続ける「粘り強さ」を大切にしてほしいということです。失敗してもあきらめずに何度も何度も粘り強く続ける力や立ち直る力、このレジリエンス力を大切にしてくれることを願っています。
高校生活を送るうえで、辛いことや困難なことなど、高い壁にその行く手を阻まれることがあるかもしれません。そのような時にこそ、「情熱」や「粘り強さ」、「根気」を持って活動することで、物事が今よりもいい方向に動き始めるはずです。このことを信じて、これからの高校生活において、様々なことに挑戦・チャレンジしてみませんか。例え失敗したとしても、そのことを肯定的にとらえ、失敗を恐れず、何度も何度も粘り強く挑戦することで、たくましさを身に付けてほしいと思っています。そうした前向きな日々の繰り返しは、皆さん一人一人の人間力を磨き、人生の大きな宝物となると確信しています。
最後になりましたが、保護者の皆様、本日はお子様の御入学、誠におめでとうございます。これからの三年間は人生の中でも一番多感な時期であり、夢や希望を抱き、自分自身を見つめ、これから進むべき道を模索する大切な期間です。お子様が充実した日々を送り、心身ともに大きく成長してほしいという点において保護者の皆様と学校は目指す方向が合致しています。保護者の皆様と学校が、子どもたちの成長を心から願う協働のパートナーとして力を合わせて進んでまいりましょう。自主・自律の教育方針に沿った本校の教育活動に御理解をいただき、御支援と御協力を賜りますようお願い申し上げます。
本日、高校生活のスタートラインに立った新入生の皆さんが挑戦と失敗を繰り返しながら「情熱」・「粘り強さ」・「根気強さ」をさらに身に付けて、三年後、この学び舎から大きく羽ばたいていくことを期待し、式辞といたします。
令和7年4月8日 愛媛県立川之江高等学校長 松木 義明
【過年度の式辞】