令和5年4月10日 全日制課程入学式 式辞
満開だった桜の木々に、光に照らされた緑の若葉の色が少しずつ入り交じりはじめた光景を、春の香りが彩る今日の佳き日、PTA会長 川﨑奈見様並びに保護者の御臨席を賜り、令和5年度、愛媛県立川之江高等学校全日制課程の入学式が挙行できますことは、生徒並びに教職員一同の大きな喜びであり、深く感謝申し上げます。
ただ今、入学を許可いたしました、165名の新入生の皆さん、入学おめでとうございます。本校への入学を目指してこれまで重ねてきた努力に対して敬意を表するとともに、創立115年を迎える歴史と伝統のある本校の一員となった皆さんの入学を心より祝福するものであります。
振り返ってみますと三年前の春以降、新型コロナウイルスのまん延が脅威となり、学校現場にも大きな影響がありました。特に皆さんは中学校への入学直後、臨時休業や学校行事の中止・縮小、さらに部活動においても活動の制限や各種大会・コンクールの中止等、思い描いていた中学校生活とは異なり、やりきれなさや喪失感を埋めるのは簡単ではなかったと思います。悔しさを胸の内にしまい、前を向くという強さを発揮するとともに、当たり前が当たり前ではなく、ありがたいことだったということに気づき、感謝することの大切さを学んだことと思います。制限のある中、自ら工夫し、先生方や友人たちと手を携えながら、勉学や部活動はもちろん、様々なことにチャレンジした皆さんに対して、「大変だったけど、よく頑張ったね。」という称賛の言葉を伝えたいと思います。
さて、本校は昨年度から、「社会に貢献できる人材の育成」を重点努力目標に掲げ、生徒一人一人が主役として輝く学校、地域に信頼される学校を目指して、「自らの夢の実現に向かって懸命に頑張れる生徒、自ら考え、発信し、行動できる生徒」の育成に努めるべく取り組んでおります。入学式に臨んでいる皆さんは今どんなことを考えていますか?きっと、これからの高校生活に対する様々な思いが交錯していることと察します。
入学に当たり、私からは「明るい気持ち」について、精神科医で評論家でもある和田秀樹先生の著書の中から紹介したいと思います。
「人は明るい気持ちでいると、笑顔になります。笑顔でいれば、自然と明るい気持ちになれます。笑顔が無理でも、仏頂面をやめることはできます。表情が明るくなれば、暗く沈みがちな気持ちも変わり始めます。自分が変われば、周囲の人たちの受け取り方も変わります。少なくとも、物事が今よりもいい方向に動き始めます。物事がいい方向に動き始めれば、人生が楽しくなって、笑顔でいられる日が続くことになります。」
皆さんの中には、もしかすると生まれついての性格は変えられないと思っている人がいるかもしれませんが、そんなことはありません。気持ちが明るくなったり、暗くなったりするのは、全て自分自身の主観(自分だけのものの見方や感じ方)の問題なのです。考え方や見方ひとつで、物事の受け止め方を変えることができるのです。
笑顔の効果について、和田先生は、①笑顔でいることで気持ちに余裕が生まれる。つまり、リラックスして日常を過ごすことで、自然と疲れやストレスを蓄積しにくくなり、何事に対してもやる気が生まれ、前向きな姿勢で物事に向き合えることから、いい結果が出やすい。②周囲の人と円滑なコミュニケーションを図るという点でも、笑顔は欠かすことのできない要素であり、あいさつや会話の際に笑顔でいると、相手に心を開いているというサインになり、相手もリラックスできることから、お互いの心理的な距離を素早く縮めることができる、と述べています。
では、明るい気持ちを引き出すにはどうしたらいいのでしょうか。和田先生の言葉を借りれば、①何に対しても「いい部分やプラス面」を探してみる。②「今日がダメでも、明日もダメとは限らない」と考える。③不安や怒り、焦りなどのネガティブな感情は「仕方がない」と受け入れる、つまり時間が経てば自然と消えていくので、ダメなものはダメと割り切って「次善の策」を考えてみる。④「パーフェクト」な自分を求めない。つまり、100点満点でなければ、0点でも同じという妥協を許さない極端な完全主義は生きづらくなるので排除する、ということです。
高校生活を送るうえで、辛いことや大変なこと等、壁にその行く手を阻まれることがあるかもしれません。そんな時にこそ、笑顔を意識することで、自然と明るい気持ちになり、暗く沈みがちな気持ちも変わり始め、少なくとも、物事が今よりもいい方向に動き始めるはずです。このことを信じて、これからの高校生活において、様々なことにチャレンジしてみませんか。例え失敗したとしても、そのことを肯定的にとらえ、失敗を恐れず、何度も何度もチャレンジを繰り返すことで、たくましさを身に付けてほしいと思っています。そうした前向きな日々の繰り返しは、皆さん一人一人の人間力を磨き、人生の大きな宝物となると確信しています。
本校正門を入ったすぐ正面には江戸時代の後期にこの川之江の地に生をうけた尾藤二洲の言葉である「志の一事は自心に問て決すべし」と刻まれた碑が建っています。高校生活をスタートするにあたって、一人の大人として、人に流されることなくそれぞれの夢(目標)に向かって、自らの考えをしっかり持って行動してほしいと願っています。そしてこの川之江高校に集った仲間たちのいい部分をお互いが取り入れて、切磋琢磨しながら、最終的には自らの意志で正しい判断を下してください。
最後になりましたが、保護者の皆様、本日は、お子様の御入学、誠におめでとうございます。これからの三年間は人生の中でも一番多感な時期であり、夢や希望を抱き、自分自身を見つめ、これから進むべき道を模索する大切な期間です。お子様が充実した日々を送り、心身ともに大きく成長してほしいという点において保護者の皆様と学校は目指す方向が合致しています。保護者の皆様と学校が、子どもたちの成長を心から願う協働のパートナーとして力を合わせて進んでまいりましょう。文武両道の教育方針に沿った本校の教育活動に御理解をいただき、御支援と御協力を賜りますようお願い申し上げ、式辞といたします。
令和5年4月10日 愛媛県立川之江高等学校長 松木 義明